最近新しい抗がん剤が世間を騒がせています。
『遺伝子改変T細胞療法』
あまり聞きなれない名前の治療法ですが、いま医療業界が最も注目している新技術のようです。
”スイス製薬大手のノバルティスは30日、同社が開発していた新型のがん免疫薬が世界で初めて米国で承認されたと発表した。奏効率が高くがん治療の新たな手段として世界的に注目を集めている薬。7月に米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会で審査を通過し承認の期待が高まっていた。
承認された新薬の名前は「キムリア」で、キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric antigen receptor:CAR―T、カーティー)と呼ばれる新しいカテゴリーの薬剤。ヒトの免疫細胞の一種であるT細胞を遺伝子操作することで、がん細胞を見つけやすく加工した。CAR―Tががん細胞に結合すると攻撃を加えて死滅させ、がんを治す。” (日経より引用)
ちなみにCNNでも特集されていました。
T細胞の細胞表面にB細胞性白血病細胞の表面に多数存在する「CD19」というタンパク質と結合する抗体を発現している。
この抗体がキメラ抗原受容体(CAR)です。
CARが白血病細胞と結合すると、CTL019が強力に活性化され、活性酸素や細胞傷害性のタンパク質を放出し、白血病細胞を死滅させます。
たしかに患者自身のT細胞にも抗原と結合するT細胞受容体があるけど、CARに比べて結合力が弱い。
→この「キムリア」は、小児・若年者の急性リンパ性白血病患者の約8割で効果があったと報告されています。
ここ数年、爆発的に売れている小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害剤の「オブジーボ」(ニボルマブ)でも2~3割とされる中、驚異的な治療成績といえます。
オブジーボの薬価は当初3500万円/年もしたけど、とても売れていて、小野薬品は絶好調なんです。
でも、もううかうかしていられませんね。今の医薬品業界の動きの速さには圧倒されます。
ただ今回のキムリアなどのCAR-Tは、患者1人1人から血液を取って遺伝子入れないといけないので、正直、製薬会社はなかなか対応出来ないと思います。
また、殆どテーラーメイドなので、薬価もべらぼうに高くなります。
つまり、今のままの技術で、誰でも使える治療選択肢になるかと言うと、厳しいようには思います。
ただ非常に技術進歩の早い領域なので、より使われやすくて安価な方法が開発されるかしれませんが。あとは、今のところ、リンパ腫とか多発性骨髄腫みたいな血液癌しか有効性が報告されていないので、今後固形癌でどの程度薬効が出るかがキモとなるのではないでしょうか。
友人の癌の研究者も 『将来的に重要な治療選択肢になることは、ほぼ間違いないかと!』 とのお墨付き。
2017年10月下旬には、CAR-Tの研究で有名な米創薬ベンチャー、カイト・ファーマを買収した米製薬大手ギリアド・サイエンシズが大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者向け治療薬「イエスカルタ」の承認を米国で取得しました。
今後も同じ分野の医薬品が相次ぎ承認・発売される見込みです。
ただし、ガン細胞を殺す能力が高いため、死んだガン細胞が患者の体内でサイトカインを大量に放出させ、炎症やショック症状を引き起こすサイトカインシンドロームが起きるなどの副作用が報告されています。
T細胞による免疫反応を強力に反応すればするほど、炎症反応は起きやすくなる、そういうジレンマも抱えているんですね。
それと、このキムリアを開発したノバルティスファーマは数年前のディオバン事件(臨床データ改ざん)以降、企業としての信頼は地に落ちています。
他の製薬企業にも言えることですが、臨床の成績の評価の仕方はその会社の影響を受けないところでキッチリと行っていただきたいですね。
臨床データを信じられないと、何も信じられなくなります。今の医療業界はまさにそんな状況な気がします。
追伸
ちなみにこの免疫の授業では、まだ紹介されていません。紹介されたりするのかな☆
少しわくわくしています。
したらねー!
タカリコ